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人間行動学:報奨金を導入してもCOVID-19ワクチンプログラムは弱体化しない

Nature

2023年1月12日

Human behaviour: Financial incentives do not undermine vaccine programmes

COVID-19の予防接種を受ければ金銭を受け取れるというプログラムを実施した場合、人々の行動に悪影響が生じないことが研究によって明らかになった。この新知見は、行動の変化を促すために報奨金(金銭的インセンティブ)の利用を検討している政策立案者にとって意味を持つ可能性がある。この研究を報告する論文が、Natureに掲載される。

報奨金は、献血や臨床試験への参加を奨励するなど、多くの状況で行動変化を促進するために用いられる。報奨金制度は、当初は行動変化を引き起こすことがあるが、一部の科学者や政策立案者は、報奨金が長期にわたって意図せぬ影響を引き起こす可能性があるため、その実施に注意を促しており、例えば、報奨金制度が中止されると、向社会的な動機付けがなくなり、安全感や信頼感が低下し、健康的な行動が減ることがあるという懸念を表明している。しかし、報奨金の意図せぬ影響を測定することは困難だ。

今回、lorian Schneider、Pol Campos-Mercade、Armando Meierたちは、スウェーデンの5000人以上を対象とした研究で、COVID-19ワクチンの第1回接種を受けた者に報奨金を支払うというプログラムを実施したことで、報奨金のない第2回または第3回の接種を受ける時期と接種を受けるかどうかの選択に影響が出なかったことを明らかにした。また、研究参加者の市民としての義務やワクチン接種の実施者に対する信頼、ワクチン接種の安全性や有効性に関する認識にも悪影響は見られなかった。

以上の研究を補完するため、米国の住民(3000人以上)が参加した研究が実施され、COVID-19ワクチン接種に対する州の報奨金制度の存在を参加者に知らせることが、参加者のその後のワクチン接種を受ける意欲、州政府への信頼、ワクチンの安全性と有効性に関する認識、献血やインフルエンザ予防接種を受ける意思に悪影響を及ぼさないことも明らかになった。論文著者は、予防接種を受けた者に少額の報奨金を与える制度について、意図せぬ結果を懸念せずに利用できると結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-022-05512-4

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