感染症:主要な調査で米国のCOVID-19ワクチン接種率が高く見積もられていた
Nature
2021年12月9日
Infectious disease: Key surveys overestimate COVID-19 vaccination rates in the USA
政策立案を決定する際の指針として用いられている、大規模調査に基づいた米国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種率の推定値は、ワクチン接種者数を高く見積もる傾向が見られることを示唆する論文が、Nature に掲載される。
米国では、疾病管理予防センター(CDC)が国内のワクチン接種に関するデータをまとめているが、データの発表が遅れることがある。COVID-19ワクチンに対する態度と行動を測定する各種調査は、リアルタイムデータの遅れを補完することができ、政府がエピデミックに対応する際に有益な情報を提供できる。しかし、それぞれの調査によって得られた知見が大きく異なる場合がある。
今回の研究では、デルファイ–フェイスブックのCOVID-19症状トラッカー(1週間の回答数は約25万)と国勢調査局のHousehold Pulse調査(1週間の回答数は約7万5000)における2021年5月のワクチン接種者数が、CDCの基準値と比べて、それぞれ17ポイントと14ポイント高く見積もっていたことが判明した。高く見積もることによる誤差は、これらの調査の統計的不確実性より数桁大きい。アクシオス–イプソスによる調査でもワクチン接種者数が高く見積もられていたが、その差は上述の場合より小さく(2021年5月時点で4.2ポイント)、調査数は最も少なかった(1週間の回答数は約1000)。これらの調査結果は、データの質を考慮しないのであれば、データセットが大きい方が良いとは限らないことを示している。
著者たちは、いずれの調査でも、主眼点がCOVID-19ワクチン接種者でなかった点を指摘している。例えば、デルファイ–フェイスブックのCOVID-19症状トラッカーは、COVIDに関連した行動の経時変化を測定することを意図している。しかし、上述した2つの大規模調査におけるワクチン接種者の推定値にバイアスが認められたことは、これらの調査が、米国内の成人集団を代表するものではないことを示している。著者たちは、統計的代表性の欠如は、他の調査結果にもバイアスをもたらす可能性があると示唆している。
著者たちは、調査データを収集する際の調査デザインをどのように選択するかによって精度が失われる可能性があると考えている。例えば、上述した3つの調査では、回答者の採用方法がそれぞれ異なっており、それぞれの推定値に異なったバイアスが入り込む可能性がある。著者たちは、データの質を測定し、ワクチン接種の評価の精度を高める作業が、公共政策の決定にとって有益な情報を提供するために必要だと結論付けている。
doi: 10.1038/s41586-021-04198-4
注目の論文
-
10月3日
神経科学:ショウジョウバエの脳の完全な地図Nature
-
9月26日
ウイルス学:牛のH5N1型インフルエンザは搾乳によって広がる可能性があるNature
-
9月26日
進化:哺乳類の顎関節の起源を調査するNature
-
9月24日
生態学:タコと魚の狩猟グループにおける共同リーダーシップNature Ecology & Evolution
-
9月19日
気候変動:将来の干ばつは予想以上に長期化する可能性Nature
-
9月17日
神経科学:妊娠に伴う脳の変化を調査するNature Neuroscience