トリュフの芳香の秘密は遺伝子に
Nature Ecology & Evolution
2018年11月13日
Rooting around in the truffle genome
4種のトリュフのゲノムについて報告する論文が、今週掲載される。この知見は、世界有数のかぐわしく高価な食物の遺伝的基盤を明らかにしている。
トリュフは、胞子が詰まった菌類の子実体であり、植物の根で成長する。トリュフを作る菌種は、100回以上独立して進化しており、主要な多肉質の菌類のほぼ全てに見られるが、トリュフの生活様式の進化に関しては重要な疑問が残されている。
Francis Martinたちは今回、珍重されているピエモンテ・白トリュフ(Tuber magnatum)とバーガンディー・トリュフ(Tuber aestivum)に加え、砂漠トリュフ(Terfezia boudieri)と豚トリュフ(Choiromyces venosus)のゲノムの塩基配列を解読した。これらのゲノムを、既知のペリゴール・黒トリュフ(Tuber melanosporum)やトリュフを作らない菌類のゲノムと比較した結果、トリュフ種は分岐してから数億年にわたって別々に進化してきたにもかかわらず、種間で予想外の遺伝的類似性が見いだされた。例えば、植物との共生や、土壌から栄養素を取り込む能力に関係する遺伝子が共通していた。また、トリュフ種では、共生する植物細胞壁の分解に他の菌類が用いている遺伝子群が限られていることも明らかになった。一方でトリュフ種は、香り高い揮発性有機化合物を産生する遺伝子の豊富なレパートリーを有しており、動物(ブタやトリュフ犬など)を誘引する刺激的な芳香を発してトリュフの胞子を散布させている。
この研究は、「1000 Fungal Genomes Project」の一環として行われたものであり、このプロジェクトでは、5年以内に菌類1000種のゲノム塩基配列を解読して、系統樹上最大級の枝に関する理解の空白を埋めることを目指している。
doi: 10.1038/s41559-018-0710-4
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