アカギツネは遺伝子によって凶暴になったり人好きになったりする
Nature Ecology & Evolution
2018年8月7日
Genes make red foxes see red or show affection toward humans
アカギツネの従順な行動と攻撃的な行動に関係すると考えられる遺伝子を明らかにしたことを報告する論文が、今週掲載される。今回のアカギツネの研究は、ヒトの行動障害を含む社会的行動の遺伝的基盤を解明する一助になる可能性がある。
アカギツネは、1世紀以上にわたり飼育下でうまく繁殖し、農場の環境に適応している。しかし、飼育されているキツネは、近縁種であるイヌとは異なり、人間に対して恐怖心や攻撃性を示すことが多い。1960年代に始まったある計画では、農場で繁殖させたキツネの家畜化を試み、人間とより関わりたがる個体を選択することによって従順な系統のキツネを、人間に対して乱暴な行動を取る個体を選択することによって攻撃的な系統のキツネを樹立した。第3のキツネ個体群は、特定の行動による選択を全く行わなかった。以上の実験的個体群によって、従順な行動と攻撃的な行動の遺伝的基盤を明らかにするまたとない機会がもたらされる。
Anna KukekovaとGuojie Zhangたちは今回、アカギツネの参照ゲノムの塩基配列を明らかにし、従順・攻撃的・通常農場繁殖の各個体群に属するキツネの再解読したゲノムを解析した。その結果、これらの3系統のキツネにおいて、選択の標的となったゲノム領域103カ所が見いだされ、その中には、ヒトで自閉スペクトラム障害や双極性障害などの神経障害と関係付けられている複数の遺伝子が含まれていた。
著者たちは、ニューロン同士の連絡に関与するタンパク質を調節する遺伝子SorCS1が、従順な行動の有力な候補遺伝子であることを見いだした。そして、アカギツネが、進化生物学およびヒト遺伝学の長年の問題である社会的行動の遺伝的基盤を理解するための強力なモデルをもたらしてくれると結論付けている。
doi: 10.1038/s41559-018-0611-6
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature