成人後の経済的負担を予測する小児期の危険因子
Nature Human Behaviour
2016年12月13日
Childhood risk factors predict adult economic burden
小児期において、成人後に福祉利用、肥満、犯罪行為といった経済的負担を負うことになる最大の人口集団を予測することが可能であるとの報告が掲載される。この研究は、数十年後に肯定的な結果を得るために若年期の介入の微調整を試みる政策立案者や保健医療の専門家たちにとって重要な意味を持つ。
Avshalom CaspiおよびTerrie Moffittの研究チームは、複数の行政データベースを、1037人のニュージーランド人を3~38歳の期間に定期的に評価した出生コホート研究「ダニディン縦断研究」で得られたデータと関連づけた。その結果、成人後の経済的負担の約80%を人口のわずか20%に関連づけられること、またこの集団を早くも3歳の時点で高い精度で特定可能なことが分かった。この「高コスト」グループは、社会経済的に恵まれない環境で成長し、児童虐待を受け、小児期のIQテストの点数が低く、幼児期の自制心が弱い傾向があった。また今回の研究の結果、「高コスト」グループは刑法犯罪の81%、福祉給付の66%、薬剤処方の78%、過剰肥満の40%を占めることも判明した。
著者たちは、「高コスト」グループの大半が、「脳の健康」上の大きなハンディキャップといった極めて不利な状況から人生を始めることから、そうした人々に経済的負担の責任を問うべきではないと指摘している。むしろ、経済的負担を大きく削減しながら成人後の健康および社会福祉を改善するための小児期介入の有用性が今回明らかとなったことから、小児期に被る不利益の影響を改善することが、社会の全ての成員にとって有益となる可能性があると著者たちは示唆している。
doi: 10.1038/s41562-016-0005
注目の論文
-
5月29日
社会科学:研究テーマの変更は被引用数の減少につながるかもしれないNature
-
5月28日
古生物学:クジラの骨から作られた最古の道具の証拠Nature Communications
-
5月27日
生態学:世界的に過小評価されている外来種のコストNature Ecology & Evolution
-
5月22日
微生物学:効果的な新しい抗マラリア薬は寄生生物を標的とするNature
-
5月21日
医学:非接触型無線モニタリングによる心臓不整脈の検出Nature Communications
-
5月20日
人工知能:大規模な言語モデルは、オンライン討論において人間よりも説得力を持つことができるNature Human Behaviour