【生態】野生ミツバチの個体数減少とネオニコチノイド系殺虫剤が関連づけられた
Nature Communications
2016年8月17日
Ecology: Wild bee declines linked to neonicotinoid pesticides
ネオニコチノイド系殺虫剤が散布されたセイヨウアブラナから餌を集める野生ミツバチは、それ以外の作物や植物から餌を集める野生ミツバチと比べて長期的な個体数減少に陥る可能性が高いことが18年にわたる研究によって明らかになった。英国内の62種の野生ミツバチを調べた今回の研究で、18年間の個体数減少とネオニコチノイド系殺虫剤の使用増加が関連づけられた。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
世界中でさまざまな種類の作物に使用されているネオニコチノイド系殺虫剤は、商業的に飼育されたミツバチとマルハナバチに有害なことが明らかになっているが、実験的状況で短期的影響だけを調べた研究がほとんどだ。英国でネオニコチノイドを殺虫剤として使用することが初めて認可されたのは2002年のことだったが、2011年にはネオニコチノイド系殺虫剤が散布されたセイヨウアブラナが全体の83%に達している。
今回、Ben Woodcockたちは、1994~2011年に栽培作物のセイヨウアブラナに対するネオニコチノイドの大量使用が英国内の62種の野生ミツバチの個体数変化にどのような影響を与えたのかを調べた。その結果、ネオニコチノイド系殺虫剤が散布されたセイヨウアブラナから餌を集める野生ミツバチは、それ以外の作物や野生植物から餌を集める野生ミツバチと比べて、個体数減少に陥る確率が3倍高いことが明らかになった。
以上の結果は、ネオニコチノイドが野生ミツバチの群集に持続的な長期的影響を及ぼすことを実証している。これまで長期的影響については、ほとんど研究されていなかった。
doi: 10.1038/ncomms12459
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature