【生理】アポロ宇宙船飛行士の死因は心血管疾患が多い
Scientific Reports
2016年7月28日
Physiology: An increased risk of cardiovascular disease in Apollo astronauts
アポロ計画の宇宙飛行士の心血管疾患(CVD)の発症リスクが地球低軌道(LEO)を周回飛行したことのある宇宙飛行士や軌道周回飛行をしたことのない宇宙飛行士より高いことを示唆する論文が掲載される。このテーマについて初めて行われた今回の研究で得られた知見は、地球を保護する磁気圏を越えた宇宙飛行にとって重要な意味を持つ可能性がある。
有人宇宙飛行は、アポロ計画の月ミッションの場合を除き、地球磁場によって宇宙放射線から保護されている地球低軌道の周回飛行に限られていた。このような条件下では、地球低軌道でのミッションや月への短期ミッションによって宇宙飛行士の心血管疾患の長期的リスクが高くなることはないと大まかに考えられていた。
今回、Michael Delpたちは、7人のアポロ宇宙船飛行士の死因と宇宙飛行を行ったことのある宇宙飛行士(35人)と宇宙飛行を行ったことのない宇宙飛行士(35人)の死因を比較して、地球の磁気圏を越えた宇宙飛行が宇宙飛行士の健康に与える影響を調べた。その結果、アポロ宇宙船飛行士の死因において心血管疾患が占める割合が、宇宙飛行をしたことのない宇宙飛行士と地球低軌道の周回飛行をしたことのある宇宙飛行士のそれぞれ約5倍の高さだったことが判明した。
こうした新知見の機構的基盤を検証するため、Delpたちは、44匹の雄のマウスを使って一連の実験を行い、模擬無重力と宇宙空間並みの放射線照射が血管系に及ぼす長期 的影響を調べた。この実験の結果は、血管系に生じる影響は放射線被ばくの結果であり、放射線と無重力の相互作用によるものではないことを示唆している。また、Delpたちは、宇宙放射線による血管内皮細胞の損傷が宇宙飛行士の心血管疾患発症の主たる原因になっている可能性があると考えている。
doi: 10.1038/srep29901
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