【古生物学】恐竜絶滅は「すす」が引き起こしたかもしれない
Scientific Reports
2016年7月15日
Palaeontology: The dinosaurs may have gone up in smoke
およそ6600万年前に起こった恐竜の大量絶滅の原因が、チクシュルーブ小惑星の衝突後に大気中に噴出した「すす」であった可能性を指摘する論文が掲載される。
チクシュルーブ小惑星の衝突によって凝縮した硫酸エアロゾルが成層圏に生成して恐竜が絶滅したという学説が提唱されている。この硫酸エアロゾルが酸性雨を引き起こし、太陽光を反射して地球の地表全体を暗黒にし、その結果、光合成が減り、ほぼ凍結状態になったというのだ。ところが、このシナリオではワニも絶滅していなければならないのだが、ワニは絶滅していない。また、小惑星の衝突によって凝縮した硫酸エアロゾルが形成されることはなく、それが長期間にわたって残留することもないという結論が実験的研究によって導き出されている。
今回、東北大学の海保邦夫(かいほ・くにお)たちは、ハイチとスペインの白亜紀-古第三紀境界(約6600万年前)から採取された堆積物を調べた。海保たちは、この堆積物試料に含まれていた炭化水素を分析して、現在のメキシコにあたる大量の原油が埋蔵された地域に小惑星が衝突したことで煙の雲が大気中に立ち上り、それが地球全体に広がったという仮説を提示している。海保たちは、堆積物試料に含まれていた炭化水素と気候モデルに基づいて、約1,500テラグラムのすすの噴出は恐竜の大量絶滅に十分な量であり、ワニなどの動物は生き残れることができたという考えを示している。
海保たちは、大気中のすすによって中・高緯度の地域が寒冷化し、ほとんどの生物種が絶滅したと主張する一方で、低緯度で軽度の寒冷化を伴う干ばつがあれば、恐竜が絶滅してもワニは生き残れたという考えも示している。
doi: 10.1038/srep28427
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