腎臓病に新しい因子
Nature Medicine
2010年12月13日
A new player in kidney disease
分泌型の糖タンパク質アンジオポエチン様因子4(Angptl4)が、腎臓病にかかわっていることが明らかになった。この発見は、ある種の腎障害の治療に道を開く可能性がある。
有足細胞(糸球体上皮細胞)は腎臓にある血液濾過に不可欠な細胞で、この細胞の機能が異常を来すと腎臓がうまく働かないネフローゼ症候群につながり、大量のタンパク質が血中から尿中へと漏出する。S Chughたちは、有足細胞からのAngpyl4の分泌亢進がこの状況を引き起こすことを明らかにした。実験的にネフローゼ症候群を発症させたラットの有足細胞では、Angptl4 mRNAとAngptl4タンパク質のレベルが非常に高くなっていることがわかり、ある種のネフローゼ症候群患者の生検でも同様だった。また、マウスとラットの有足細胞で導入したAngptl4遺伝子を過剰に発現させるだけで、ネフローゼ症候群を引き起こすに十分なことと、マウスでAngptl4遺伝子をノックアウトするとネフローゼ症候群を起こさなくなることもわかった。
Angptl4の過剰発現がネフローゼ症候群を引き起こす仕組みは完全には判明していないが、分泌亢進したAngptl4の大半は、翻訳後に適切なグリコシル化修飾を受けていないことが明らかになった。その結果、Angptl4の電荷が変化し、それが腎臓の濾過単位の細胞外マトリックスがもつ正味の電荷を変化させ、腎臓の機能不全につながる可能性がある。この仮説を裏付けるように、有足細胞でAngptl4を過剰に発現するラットにシアル酸前駆体を食べさせると、正常な電荷をもつ分泌型Angptl4が大幅に増加し、腎不全の改善に役立つこともわかった。
doi: 10.1038/nm.2261
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