【微生物学】複数の結核菌株に感染していた18世紀のミイラ
Nature Communications
2015年4月8日
18世紀のヨーロッパ人の遺体から採取された結核菌のDNAの網羅的解析が行われ、当時は結核菌の混合感染(同時に複数の菌株に感染すること)が一般的だったことが明らかになった。この研究結果の報告が、今週掲載される。この結果は、結核の進化の新たな手掛かりであり、今日のヨーロッパと北米・南米で流行している最も一般的な系統株の1つ(Lineage 4)の起源がローマ時代にさかのぼることを示している。
かつてヨーロッパにおいて主要な死亡原因だった結核が、一部の地域で復活を果たしているが、古代の結核感染に関わった系統株と感染パターンが現代の結核とどのような関係にあるのかは明確になっていない。今回、Mark Pallenたちは、ヴァーチ(ハンガリー)のドミニコ会教会の地下室に安置されていた26人の遺体から採取した結核菌DNAについて、ショットガンメタゲノミクスによる解析を行った。これらの遺体の大部分は、自然にミイラ化していた。過去の記録によれば、これらの人々が死んだのは1745~1808年のこととされる。Pallenたちは、そのうちの8人に由来する14点の結核菌ゲノムを再現したが、そのうちの5人から複数の結核菌遺伝子型が見つかった。このことは、複数の系統株による結核感染が流行していたことを示している。今回同定された結核菌ゲノムはすべてLineage 4であった。Lineage 4は、現代のヨーロッパと北米・南米でも年間100万以上の症例を引き起こしている。26人の遺体の中には、同じ2種の結核菌株に感染していた母親と娘が含まれており、過去の複数回の結核感染の密接な疫学的関連性が初めて明らかになった。
doi:10.1038/ncomms7717
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