Research Press Release
風が再形成する、地球と、おそらくは火星の峡谷
Nature Geoscience
2015年3月10日
風は地球の河床峡谷の形状を大きく変え得るという報告が、今週のオンライン版に掲載される。より湿潤だった初期の火星で流水により切り開かれたと考えられている古代の峡谷も、火星表面における30億年にわたる風の作用で同様に再形成された可能性がある。
河床峡谷は地球上ではよく見られる。このような峡谷は、乾燥した風の吹く環境でも多く見られるが、形状の解釈には河川による浸食が用いられる。このような地形における風の浸食能力についてはよく分かっていない。Jonathan Perkinsらは、チリ北東部のアンデス山脈に位置する河川峡谷を解析した。ここには強い局地的な風にさらされている峡谷と、風から守られている峡谷がそれぞれ複数存在する。そして風にさらされた峡谷は水の影響のみを受ける峡谷よりも長く幅広く、なめらかであることを発見した。峡谷の形態の差は、地形の上を吹く風の強さと相関があり、風が峡谷を再形成する要因となっていることを示唆している。この過程は、火星のような他の風の強い世界でも起こる可能性がある。
関連するNews & Viewsの記事で、J. Taylor Perronは「今後、風が主要な地表現象である惑星の地形を解釈する際には、このメカニズムを考慮することが必要だ」と記している。
doi:10.1038/ngeo2381
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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