Research Press Release
幹細胞中に生き残るDNA損傷
Nature Cell Biology
2010年5月17日
皮膚の外側の層(表皮)中に存在する幹細胞は、DNAが損傷を受けた後に起こる細胞死に極めて高い耐性を示すことがわかった。幹細胞がDNA損傷を検知して対応し、正確な遺伝情報が確実に伝搬されるようにする仕組みはほとんどわかっていない。そのため今回の知見は、一部の組織がDNA損傷によって誘導される腫瘍発生と老化に高い感受性をもつことに重要な関係があるかもしれない。
幹細胞は、長期にわたって成体組織中にあって複製を行うので、有害な変異が蓄積するリスクが高い。したがって、DNAが損傷を受けた後に、ゲノムの完全性維持と組織の完全性保存をうまく釣り合わせていくことは、がんや老化を回避しながら組織の代謝回転を確実に行う上で非常に重要である。 C Blanpainたちは、毛嚢幹細胞はDNA損傷後にアポトーシスとして知られる細胞死を起こしにくいことを見いだした。これは、抗アポトーシスタンパク質であるBcl-2の発現が増大し、DNA損傷修復が加速するからである。この修復は、DNA二本鎖切断を修復する非相同末端結合(NHEJ)DNA 修復経路によって行われている。
doi:10.1038/ncb2059
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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