Research Press Release
【遺伝】性比の偏りによってマラリアカの個体数を制御する
Nature Communications
2014年6月11日
遺伝的修飾の手法を用いてマラリア蚊の個体数の性比に偏りを生じさせると、その繁殖力が損なわれ、その成長が抑制されることが明らかになった。今回の研究では、生殖によって生まれる雄の数を人為的に増加させることが、マラリア蔓延を抑制する有効な手段となる可能性が浮上した。研究の詳細を報告する論文が、今週掲載される。
多くの害虫種において、雌の個体群の適応度が、全体的な個体群のサイズを維持する役割を担っている。そのため、害虫の生殖における性比を極端に雄に偏らせることが、害虫の個体数を制御する有効な方法だとする考え方が示されていた。
今回、Nikolai Windbichlerたちは、改変型酵素を用いて、マラリア蚊(ガンビエハマダラカ)のX染色体の特定の領域を選択的に破壊し、その雄と雌の自然の性比に偏りを生じさせるシステムを開発した。改変された酵素の活性は減数分裂(生殖における細胞分裂)に限定されるため、生殖能力は影響を受けないが、X染色体は次世代に受け継がれない。
このシステムをケージ内で飼育されたマラリア蚊に導入したところ、蚊は生殖能力を保持したが、生殖によって生まれる雄の割合が95%を超え、個体群の大きさが効果的に抑制された。Windbichlerたちは、このシステムが、遺伝的操作によって病害虫の蔓延を抑制する基盤となる可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms4977
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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