Research Press Release

動物学:笑い声を聞いたボノボは、報酬を期待する可能性が高まる

Scientific Reports

2025年6月27日

ボノボ(Pan paniscus)は、笑い声を聞いた際に、報酬が得られるかどうか分からない物体にも、より積極的に近づく傾向があることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究では、箱の中に食べ物が入っているかどうかによって、箱と接触するか無視するかを訓練された4頭のボノボを観察した。その結果、ポジティブな音を聞くことが、ボノボらの採餌行動や探索行動に影響を与える可能性が示唆された。

大型類人猿は、遊びやくすぐり中に人間のような笑い声に似た音声を発することが観察されている。これらの音は、遊びが攻撃と誤解されるリスクを軽減するために進化したと考えられており、個体間の感情の伝染を示す可能性がある。この感情の伝染——笑いのような感情信号が他者に同様の感情状態を引き起こす現象——は、共感の重要な要素とされている。

Sasha WinklerとErica Cartmillら(カリフォルニア大学ロサンゼルス校〔米国〕)は、アイオワ州デモイン(Des Moines)のApe Cognition and Conservation Initiativeで、4頭のボノボ(14歳の雌のMali、12歳の雄のTeco、41歳の雄のKanzi、および24歳の雄のNyota)の認知能力を評価した。類人猿たちは、食べ物の報酬が入った黒い箱と空の白い箱に慣らされ、白い箱を拒否するためにボタンを押すように訓練された。3つの「曖昧な」箱(薄い灰色、中間の灰色、および濃い灰色)が断続的に提示され、50%の試行で食べ物の報酬が入っていた。テストは、ボノボの笑い声または風の環境音が7分28秒間再生される中で実施された。ボノボは黒の箱に93%の確率で近づいたが、白の箱には1%の確率でしか近づかなかった。灰色の箱が提示された場合、類人猿は濃い灰色の箱に薄い灰色の箱よりも頻繁に近づいた。すべての灰色の箱の試みを総合すると、ボノボは録音された笑い声を聞いた後、灰色の箱を確認する傾向が強くなり、笑い声は、コントロール音と比較して、ボノボがこれらの箱に近づく確率を 3.4 倍に高めた。

著者らは、笑い声がボノボに感情の伝染を引き起こし、その行動に影響を与え、曖昧な刺激に近づく可能性を高めたかもしれないと指摘している。著者らは、研究のサンプルサイズが小さい点を指摘し、今後の研究では、霊長類の社会的絆の進化における笑いが果たす役割に焦点を当てることを提案している。

Winkler, S.L., Laumer, I.B., Lyn, H. et al. Bonobos tend to behave optimistically after hearing laughter. Sci Rep 15, 20067 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-02594-8
 

doi:10.1038/s41598-025-02594-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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