【微生物学】母親の食餌が仔の腸内微生物の構成を変える
Nature Communications
2014年5月21日
ニホンザルの研究で、妊娠時の母親の食餌が、その仔の腸内微生物に持続的な影響を及ぼすことが明らかになった。肥満、自己免疫疾患など、いくつかの疾患の発症において、腸内微生物が何らかの役割を果たしているので、この研究結果は、母ザルの食餌の違いで、仔の健康に影響が生じる可能性のあることを示唆している。詳細を報告する論文が、今週掲載される。
出生直後の腸内での微生物の定着に対する母親と乳仔の食餌の影響は、よく分かっておらず、現在の知識の大部分は、マウスの研究に基づいている。今回、Kjersti Aagaardたちは、ニホンザルの腸内微生物のカタログ(マイクロバイオーム)の解析を行った。ニホンザルの生理は、ヒトの生理に非常によく似ている。この研究では、ニホンザルに高脂肪食と低脂肪食を与える実験が行われ、妊娠時と泌乳期の母親の食餌が仔の腸内マイクロバイオームに大きく影響することが分かった。また、腸内マイクロバイオームに対する影響は持続性があり、離乳後の仔の食餌にそれに対応する変化が生じても、その影響が部分的にしか逆転しないことも判明した。
今回の研究は、妊娠時と幼少期に、食餌が腸内マイクロバイオームの組成を決定する上で重要な役割を果たしていることを明確に示している。マイクロバイオームが受ける影響が仔と成体の健康にどのように影響するのか、そして、妊娠時や離乳後の食餌介入によって特定の疾患を予防できるのかどうかを明らかにするためには、さらなる研究が必要だ。
doi:10.1038/ncomms4889
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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