Research Press Release
血漿脂質が免疫の抑制を促進する
Nature Medicine
2014年4月14日
ある種の肝硬変(肝臓病が進行した状態)患者の血液中に増加している脂質分子が、免疫抑制に関係しているとの報告が寄せられている。肝疾患のマウスでアルブミンによってこの脂質の量を減少させると、感染のリスクが低下することから、肝疾患で免疫抑制の見られる患者へのアルブミン投与について、さらに臨床試験を行う必要があると考えられる。
肝硬変患者では、肝臓に瘢痕が生じて肝機能が低下し、感染のリスクが高まるが、免疫抑制の原因となる仕組みは明らかになっていない。
Derek W Gilroyたちは、2つの型の肝硬変患者の血液中で、免疫細胞から放出されるPGE 2という脂質分子の濃度が上昇していることを発見した。2つの型とは、急性の非代償性肝硬変と末期肝疾患である。これらの肝硬変患者の血液試料では、培養すると免疫細胞の機能が損なわれており、細菌を殺す働きが弱くなっている。アルブミンは血液中に広く見られるタンパク質の1つで、肝疾患患者では減少しているが、PGE2の量を低下させる働きがある。培養免疫細胞にアルブミンを加えると、細胞の抑制された機能が元に戻る。肝疾患の2種類のマウスモデルで、アルブミンを投与したところ、B群連鎖球菌に曝露後のマウスの生存率が改善した。
doi:10.1038/nm.3516
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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