Research Press Release

炭疽毒素の物語の展開

Nature Structural & Molecular Biology

2010年11月1日

Nature Structural & Molecular Biology(電子版)の論文で、炭疽毒素が細胞に入り込む仕組みが視覚化されている。炭疽菌の生活環における基本的な過程を生じる機構を理解することで、こうした病原菌の弱点を探し出すことができる。

炭疽菌(Bacillus anthracis)は炭疽の原因となる細菌で、致死因子(LF)という毒素を作り出し、これがいったん細胞に入り込むと患者を死に至らしめる。しかし、宿主細胞への毒素タンパク質の注入は、びんの中に船を入れるようなもので、折りたたみをほどいて細胞の狭いチャネルを通り抜け、細胞内で活性な形に再び折りたたまなければならない。

疽菌の致死的な毒素注入装置そのものは防御抗原(PA)と致死因子(LF)からなり、LFは宿主細胞への移行のためほどけた状態になっている。この状態を安定化するくぼみを作る8分子のPAの表面に、4分子のLFそれぞれがほどけて結合する仕組みが、構造・機能解析により示されている。これは細菌が分子の形を調節し、確実に機能を保つ方法を示している。

doi:10.1038/nsmb.1923

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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