エピジェネティックな伝達により経験は世代を超える
Nature Neuroscience
2013年12月2日
マウスはその祖父が学習した情報を生物学的機構により伝承しているとの論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、後世代がDNA修飾による伝達を通じて、祖先が得た特定の経験から利益を得られるとの証拠を提供している。
遺伝子のスイッチは半永久的なやり方で入れたり切ったりできる。これはエピジェネティックマークというDNAの分子的変化によるもので、これら変化のあるものは世代を超えて維持できる。典型的には、外傷性もしくはストレスの多い経験をした動物では、後世代の子孫にエピジェネティックな変化を通じて情動行動に影響が現れる。
ところがBrian DiasとKerry Resslerは、学習した情報のうち特定のものは、生殖細胞を通じて後世代に伝達される場合があることを示している。Diasたちは、サクラの花に似た匂いを恐れるようにマウスを訓練し、さらにつがわせて子孫をもうけさせた。生まれた子孫はサクラの花の香りを嗅いだ経験がないのに、その香りに対し他の中性的な匂いよりも強い恐怖応答を示した。そればかりか、子孫の次世代が同様の行動を示した。こうした恐怖応答は、サクラの花に恐怖を示す父親の精子を用いて人工授精で妊娠した場合でも子孫に伝達された。研究チームはまた、訓練を施したマウスでもその子孫でも同じく、恐怖につながる匂いを検知するのに用いる脳の領域で恐怖応答に伴って構造変化が生じており、また精子では匂いを検知するのに関わる遺伝子にエピジェネティックマークがついていることを発見した。
脳の神経回路に格納された経験が伝達され、以降の世代のゲノムに安定して記される仕組みを明らかにするには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/nn.3594
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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