コカイン中毒の再発抑制を増強
Nature Neuroscience
2013年11月25日
コカインの使用中止を経験しているラットで脳内にある神経伝達物質グルタミン酸受容体の機能を強化すると、薬物を欲しがる行動を抑制できるとの研究が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、薬物中毒の再発を妨げる有効な薬理学的治療戦略を示唆している。
回復途上にある薬物中毒者が最初の薬物使用を思い出すような状況にあると、強い渇望を経験し、それが再発を誘発しかねない。薬物中断が引き起こす渇望は、中毒過程に関与するとされる中隔側坐核という脳領域での分子的変化に結びついている。これまでのMarina Wolfたちの研究では、ラット でしばらくの薬物中断に続いてコカインを使用すると、中隔側坐核にあるカルシウム透過性AMPA受容体(CP-AMPAR)が介在する神経シナプス伝達に長く持続する強化を導くことが報告されている。CP-AMPAR介在型シナプス伝達はまた、mGluR1というグルタミン酸受容 体の活性化によって抑制されることがある。
Wolfたちは、mGluR1の機能を増強できるSYN119という分子が渇望に対して示す効果をラットで調べた。コカイン中断を行っているラットが以前にコカイン摂取と関連づけた合図にさらされると示す渇望が、SYN119を投与しておくと減少することをWolfたちは発見した。それに加えて、mGluR1の増強は、それらラットの中隔側坐核におけるCP-AMPAR介在型シナプス伝達の活動を正常化した。
今回の結果がヒトの薬物中毒者に適用できるか否かは不明だが、薬物中断を制御するための治療法を発展させる新たな方向性を導くものである。 SYN119の効果は数日間持続するので、過去の中毒者が継続して節制するための実行可能な選択肢として、mGluR1増強処置が使える可能性が示されたといえる。
doi:10.1038/nn.3590
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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