【神経科学】メチルフェニデートが薬物探索行動を亢進させる
Nature Communications
2013年11月6日
リタリンという処方薬に含まれる活性化合物メチルフェニデートには、リタリンを追加的に摂取したときの脳の応答を増強させる作用がある。このほど、ラットがメチルフェニデートを自己摂取できるようにした実験が行われ、アンフェタミン探索行動が亢進することが明らかになった。この新知見は、快楽追求目的にも用いられている処方薬に隠された副作用の存在を示している。
メチルフェニデートは、西欧諸国で、注意欠陥・多動性障害(ADHD)とナルコレプシーに広く処方されているが、認識促進効果と陶酔感が得られるという研究報告があるため、快楽追求目的にも用いられている。しかし、快楽追求目的でのメチルフェニデート摂取の神経生物学的意義に関する情報は少ない。今回、Sara Jonesたちは、この論点に取り組むため、ラットにメチルフェニデートを自己摂取させる実験を行ったところ、この自己摂取活動によって、ドーパミン輸送体タンパク質の濃度が上昇し、この活動が、常習行為に大きく関係することが判明した。さらには、メチルフェニデートによるドーパミン輸送体濃度の上昇が、メチルフェニデートやそれと類似した特性を有する薬物(例えばアンフェタミン)の探索行動を亢進させることが明らかになった。
ヒト集団におけるドーパミン輸送体濃度には個人差があり、ADHDと外傷後ストレス障害の患者で観察されているが、Jonesたちは、この個人差から、メチルフェニデートやアンフェタミンなどの化合物の乱用に対する感受性を予測できる可能性があると考えている。ただし、この点を確認するには、ヒト集団における研究をさらに進めることが必要だ。
doi:10.1038/ncomms3720
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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