Research Press Release
【医学研究】代謝性疾患の新たな治療標的
Nature Communications
2013年9月11日
Ecscrタンパク質が欠損していると、インスリン感受性が増強され、高脂肪食をとるマウスが肥満になりにくいことが明らかになった。この研究結果は、Ecscrの不活性化が2型糖尿病と肥満関連代謝性疾患を抑制するための治療法となる可能性を示唆している。
インスリン抵抗性は、肥満と密接な関係があり、2型糖尿病の初発症状の1つでもある。内皮細胞(EC)は、インスリン抵抗性の発生に関与していることが知られているが、今回、池田宏二(いけだ・こうじ)たちは、内皮細胞シグナル伝達を調節する膜貫通タンパク質であるEcscrタンパク質の欠損によって、高脂肪食をとるマウスが肥満と肥満関連代謝性疾患から守られることを明らかにした。また、通常の餌を摂取するマウスの場合でも、Ecscrの欠損によって、耐糖能が高まり、インスリン感受性が増強され、その際に、体重と体脂肪量は変化しなかった。次に、池田たちは、それまでと逆の方法を用いて、Ecscrを活性化させたところ、インスリン感受性が損なわれ、マウスは肥満になりやすくなった。
今回の研究は、内皮細胞を介した全身のエネルギー代謝とグルコース恒常性の調節に関する手がかりをもたらしており、これが、メタボリックシンドロームの新たな治療法につながる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms3389
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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