Research Press Release

脳に導入遺伝子を送達する

Nature Methods

2010年10月18日

マウスの中枢神経系に外来遺伝子を送達するための簡単な方法が、Nature Methodsで発表される。

外因性遺伝子ともよばれる導入遺伝子は、ウイルスベクターを用いて脳に送達される場合が多いが、既存の方法には欠点が存在する。特に、ベクターは脳に直接注射しなければならないのが普通である。末梢に投与して脳に届くベクターも存在するが、主としてニューロン以外の細胞や未熟なニューロンが標的とされる。

今回J-P Louboutinたちは、組み換えSV40ウイルスに由来するベクターをマウスに静脈注射すると、中枢神経系の複数の領域に存在する成熟ニューロンで導入遺伝子が効率的に発現することを示した。この現象は特に、有機化合物マンニトールの投与で血液脳関門が緩んだときに生じた。

研究チームは、標準的なレポーターおよび治療薬としての可能性をもつタンパク質の双方を用い、この方法による脳への送達を調べた。その結果、皮質および脊髄の複数領域に存在する成熟ニューロンが強力に標的化されたという。しかし、蛍光タンパク質などいくつかの一般的なレポーターの送達には、最適化の余地が残されている。

さまざまな種類のタンパク質を発現する導入遺伝子がマウス中枢神経系の成熟ニューロンに対して広く強力に送達されるようにすることで、この方法は神経生物学のさまざまな実験を簡素化して実現可能なものにすると考えられる。

doi:10.1038/nmeth.1518

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度