1つの薬でアルツハイマー病とプリオン病の両方に効果
Nature Medicine
2013年8月19日
アルツハイマー病とプリオン病の進行を促進する共通の経路が見つかった。この経路を阻害することによって、これらの病気のマウスモデルで病気の進行を遅くできることから、この経路を標的にすれば、1つの薬で両方の病気の治療に効果が得られる可能性が出てきた。
アルツハイマー病とプリオン病では、それぞれアミロイド前駆体タンパク質と細胞プリオンタンパク質が細胞表面で切断される。α-セクレターゼ分解と名付けた保護経路は、これらのタンパク質を処理して別の型に変え、これらの病気で蓄積するはずの有害なタンパク質が形成されないようにする。
Benoit Schneider、Jean-Marie Launayたちは、プリオンに感染したマウスやアルツハイマー病に似た病気を発症するよう遺伝子操作したマウスでは、α-セクレターゼ活性が低下していることを明らかにした。これに関連して、アルツハイマー病の患者の脳やこれらの病気のマウスでは、キナーゼPDK1の活性が上昇している。薬剤を利用して、あるいは遺伝的手法によってマウスのPDK1を阻害すると、ニューロンが感染性プリオンやアミロイドβによる有害な作用から保護され、α-セクレターゼによる処理という保護経路が促進される。プリオン感染したマウスでは、PDK1の阻害により病気の進行が抑えられ、生存期間が延び、運動障害が軽減される。同じ阻害剤をアルツハイマー病の3種類のトランスジェニックマウスモデルに投与すると、アルツハイマー病に似た症状の発症や記憶障害が抑えられる。
doi:10.1038/nm.3302
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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