Research Press Release
【自然の設計】ムール貝のひげを抜くには
Nature Communications
2013年7月24日
船底や海岸の岩場に張り付いたムラサキイガイは、激しい波の衝撃を受けても剥がれない。なぜなのか。この謎は、長年にわたって解明されていなかったのだが、このほど、ムラサキイガイの足糸の材質分布が巧妙にできているため、押し寄せる波のエネルギーを吸収できることが明らかになった。これは、人工構造物の新たな設計戦略となる可能性がある。
ムラサキイガイ(ムール貝)の足糸は、料理人の間で「ひげ」として知られ、それを抜かなければ調理できない。ムラサキイガイは、足糸によって、いろいろな物体表面にしっかりと付着できる。ただし、物体表面に対する付着強度と足糸自体の強度のいずれもが波の衝撃波力を下回っているため、ムラサキイガイが付着状態を維持する機構がわからなかった。ムラサキイガイの足糸は、強力なエネルギー吸収を可能にして、波の力を緩和しているのだが、今回、Markus Buehlerたちは、この足糸から特異な構造原理と複合材設計原理を見つけ出した。
このように効率的だが単純な構造は、エネルギー吸収が必要とされる人工的設計を生み出すために応用できることが明らかで、その一例として、地震多発地域での構造物の設計が考えられる。
doi:10.1038/ncomms3187
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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