【物理科学】実験室内でのX線加速
Nature Communications
2013年6月12日
レーザープラズマ加速を用いて、2ギガ電子ボルト(GeV)のエネルギーの電子が初めて生成された。この結果は、レーザーを利用した卓上粒子加速器の開発に向けた重要な一歩といえる。卓上粒子加速器があれば、実験室内でX線を生成できるようになるのだ。現在のところ、X線の生成は大型施設で行われている。
粒子加速器は、さまざまな科学分野で重要な技術であることがわかっており、特に粒子加速器によって生成されるX線は、生物学、化学、材料の研究に利用できる。しかし、そのために通常用いられるシンクロトロンや線形加速器は、国立の大型施設に設置され、キロメートルという長さスケールになっている。これに対して、レーザープラズマ加速器は、わずか数センチメートルの長さで、シンクロトロンの場合と同等のエネルギーに電子を加速できる。レーザープラズマ加速では、強力なレーザーパルスを用いてプラズマ中に電場を発生させ、この電場によって、電子が高速、高エネルギーに加速される。これまでのところ、測定されたエネルギーの最高値は、約1 GeVだった。 今回、Michael Downerたちは、新しい高出力レーザー技術を利用して、達成可能なエネルギー値を2 GeVまで高めた。そして、加速された電子のエネルギー幅は非常に狭く、狭帯域のX線の生成に適している。この新たなシステムで達成された実験パラメーターは、卓上型X線源や次世代の粒子衝突型加速器に適合している。
doi:10.1038/ncomms2988
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:チンパンジーはアンドロイドからのあくびがうつることがあるScientific Reports
-
気候変動:干ばつの深刻化を招く要因の評価Nature
-
生物学:母親の鉄欠乏がマウスの雄の性決定に影響を及ぼすNature
-
気候:海と大気の相互作用が2023年の北大西洋熱波をもたらしたNature
-
天文学:天の川銀河はアンドロメダ銀河との衝突を回避できるかもしれないNature Astronomy
-
生体医工学:AIペンが筆跡からパーキンソン病を検出Nature Chemical Engineering