Research Press Release

医学:ベータサラセミア治療として幹細胞移植が有効である

Nature

2026年4月9日

幹細胞移植は、血液疾患であるベータサラセミア(β-thalassaemia)患者のヘモグロビン産生を迅速かつ効果的に回復させる手段となり得ることを報告する論文が、Nature に掲載される。第1相臨床試験で報告されたこの治療法は、将来的には一部の患者における輸血への依存度を低減させる可能性があるが、これらの知見を裏づけるためにはさらなる臨床試験が必要である。

ベータサラセミアは、ヘモグロビンのβサブユニットを正常に合成できないことを特徴とする血液疾患であり、貧血や赤血球産生の障害を引き起こす可能性がある。このサブユニットの合成障害は、βグロビン遺伝子(β-globin gene;HBB)における350種類以上の既知の変異によって引き起こされることがあり、おもに治療は定期的な赤血球輸血であるが、これは患者にとって負担の大きい治療法である。胎児ヘモグロビン(HbF:胎児期に発現するが、出生後に減少する)にはβサブユニットが含まれていない。したがって、そのレベルを上昇させることは、ベータサラセミアの長期治療法として有望である。HbFレベルの上昇は、幹細胞療法によって達成可能だが、このアプローチを検証する臨床試験はこれまで行われていなかった。

Jia Chenら(上海科技大学〔中国〕)は、重症のベータサラセミア患者5名に対し、自己由来の改変幹細胞を1回投与した第1相臨床試験の結果を報告した。著者らは、塩基編集を用いて特定の結合部位を改変し、HbF産生を担う遺伝子を再活性化させた。参加者は、幹細胞投与後1か月以内に定期的な赤血球輸血を中止した。投与後3か月時点で、血中の総ヘモグロビン濃度12.4 g/dL、HbF濃度11.5 g/dLが確認され、機能的なヘモグロビンの産生が成功したことを示唆している。これらの値は、中央値23か月に及ぶ追跡期間を通じて維持または改善された。

この治療法の有効性を、より大規模な対象集団において、かつより長期にわたって検証するためには、さらなる臨床研究が必要となる。しかし、これらの結果は、1回の幹細胞注入によって、一部の患者において輸血への依存から脱却する一助となり得ることを示唆している。

  • Article
  • Published: 08 April 2026

Lai, Y., Liu, R., Wang, L. et al. Clinical application of base editing for treating β-thalassaemia. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10342-9
 

doi:10.1038/s41586-026-10342-9

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