Research Press Release
【生物科学】ミツバチに神経機能障害を起こす農薬
Nature Communications
2013年3月28日
現実の環境で考えられる程度の濃度であっても、一部の農薬は、ミツバチの脳に神経機能障害を引き起こすことが明らかになった。今回の研究では、観察されたミツバチの採餌行動の阻害や変異の基盤となる細胞機構が判明した。
農薬は、作物の収量維持を補助するうえで非常に有効なことが明らかになっているが、農薬の使用は、多くの昆虫種の個体数減少に関係すると考えられてきた。2種の農薬(ネオニコチノイドと有機リン酸塩)は、昆虫の中枢神経系における神経伝達に影響を及ぼすことが明らかになっているが、食料生産に必須の受粉を媒介するミツバチに対して、これらの農薬がどのような特異的な影響を及ぼすのかについては解明されていない。今回、Christopher Connollyたちは、ミツバチの脳内のニューロンのホールセル記録を行って、広く使用されている2種の農薬(イミダクロプリドとクロチアニジン)が、ニコチン性受容体を活性化させることで、ニューロンの興奮性を損なうことを見いだした。
Connollyたちは、この機構によって、特定の農薬に曝露されたミツバチに見られる認知機能障害とその後の個体数減少を説明できると結論づけており、この新知見が、目的の害虫種に対する選択性の高い害虫防除方法の向上につながることを期待している。
doi:10.1038/ncomms2648
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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