アンチRNA療法が、乳がんの広がりを抑える
Nature Biotechnology
2010年3月29日
がんの転移による拡散を防ぐ新しい治療法が、乳がんのマウスモデルで明らかになった。ヒトで試験する前に安全性や効果をさらに研究する必要があるが、この研究は原理証明であり、これがいつか乳がんの効果的な治療法になる可能性がある。
がんに関連した死亡の大多数は転移によるものだが、このような二次腫瘍をもつ患者のための治療法開発を妨げる要因がいくつかある。1つの問題は、がんの浸潤、進行にかかわる分子機構の解明が不十分なことで、そのため治療介入の標的が決められない。最近、ある種の核酸分子(マイクロRNA(miRNA)とよばれる)が関心を集めている。これは、正常細胞で遺伝子発現の制御に重要な役割を果たしていて、病気の発生や進行にもかかわっており、なかには、がんの転移形成の主要な調節因子となっているものもある。また、最近アンタゴmir(miRNA阻害剤)とよばれる新しい種類の薬が報告されている。これは細胞の特定のマイクロRNAに結合する能力をもつ核酸分子で、この相補的マイクロRNAを分解させる。
R Weinbergたちは、がんの転移の治療にアンタゴmirが利用できる可能性を明らかにした。アンタゴmirを静脈注射して転移促進性マイクロRNAを阻害することにより、マウスの侵襲性乳がんからの新たな転移巣の形成が妨げられた。このアンタゴmir療法は、一次腫瘍や転移が成立してできた病巣には効果を示さないが、新たに形成される転移巣の数は80%も減少させる。
doi:10.1038/nbt.1618
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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