Research Press Release
神経変性:神経保護タンパク質によって脳損傷を防ぐ
Nature Communications
2012年11月14日
脳損傷の齧歯類モデルを用いた研究で、カルシウム結合タンパク質S100A4に神経保護作用のあることが明らかになった。この新知見は、数多くのヒト疾患において重要な役割を担うS100タンパク質ファミリーの役割に関する新たな手がかりをもたらしている。この研究結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
脳損傷は、一次損傷が炎症経路とアポトーシス経路を開始させて、ニューロン死を引き起こすという複雑な過程だ。S100A4は、低分子量カルシウム結合タンパク質で、最初は、転移プロモーターとして同定され、主にがんとの関連で研究対象となっていた。今回、D Kiryushkoたちは、S100A4を欠損したマウスにおける脳損傷の影響を調べた。このマウスにおいては、頭部外傷が発生した後、ニューロン減少と細胞の酸化的損傷が悪化し、関連する神経保護タンパク質の発現が低下した。次に、S100A4を模倣するペプチドを脳損傷のあるマウスに注入したところ、神経変性の発症を遅らせることができた。さらには、こうした効果が、IL-10受容体とJAK/STATシグナル伝達経路を介したものであることも判明した。
今回の研究は、マウスを対象としたものだが、Kiryushkoたちは、S100A4を治療に用いて、多くのタイプの臨床的神経変性において細胞を保護できる可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms2202
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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