Research Press Release
創傷に応じて血管新生を誘導する
Nature Cell Biology
2012年9月24日
ある因子が修飾されると、それが血管新生、つまり新しい血管の形成を創傷特異的に促進することが報告された。この知見は、血管の細胞が創傷に応答する仕組みを明らかにしており、また病的な血管新生に対する選択的治療的介入の基盤となる可能性がある。
Paul Foxたちは、細胞骨格の構成成分であるアクチンの調節因子のプロフィリン 1(Pfn-1)が、VEGF-Aに応答して修飾されることを見いだした。VEGF-Aは、発生や組織修復の際に血管新生を誘導する重要な因子の1つである。そして、細胞のVEGF受容体2(VEGFR2)がVEGF-Aを認識すると、VEGFR2によってPfn-1へのリン酸基付加が引き起こされることがわかった。このようなPfn-1修飾によってアクチンネットワークの再編成が促され、それに導かれて内皮細胞が移動して脈管構造が形成される。これは、血管新生に必要な過程の1つである。Foxたちはさらに、VEGFR2が仲介するPfn-1修飾が起こらないトランスジェニックマウスを作製した。そして、このようなマウスでは発生は正常であるのにもかかわらず、皮膚の損傷、あるいは組織への血液補給が制限されるといった条件下で引き起こされるのと類似した内皮細胞の移動と血管新生が、創傷後に起こらないことが明らかにされた。
doi:10.1038/ncb2580
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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