Research Press Release
遺伝子治療で嗅覚機能が回復
Nature Medicine
2012年9月3日
繊毛の形成と嗅覚応答を回復させるための遺伝子治療法が明らかになり、特定の遺伝性疾患に関して、遺伝子治療によって繊毛形成を回復させ、感覚機能を修復できるという原理が証明された。
繊毛関連疾患は、繊毛形成あるいは繊毛機能の異常を原因とする一連の遺伝性疾患のことで、繊毛は、細胞の表面から突き出た細胞小器官の一種だ。繊毛関連疾患は、失明、聴覚又は嗅覚の消失などの感覚障害を伴う場合がある。
今回、J R Martensたちは、ヒト繊毛関連疾患に関連する鞭毛内輸送タンパク質88(IFT88)の変異を同定した。IFT88を持たないマウスは、鼻の中のニューロン上の繊毛が短く、形成異常を起こし、匂いの認識ができない。そして、Martensの研究チームは、IFT88を持たないマウスの鼻にIFT88を発現するアデノウイルスベクターを送達することで、繊毛の異常と匂い分子に対するニューロンの応答が回復することを明らかにした。また、これらのマウスにおいて、嗅覚機能によって仲介される吸乳行動と摂食行動も遺伝子治療で回復することがわかった。
doi:10.1038/nm.2860
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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