Research Press Release
経口ワクチンが腸の粘膜に到達
Nature Medicine
2012年7月17日
マウスの大腸へと特異的に運ばれて、直腸粘膜と生殖器粘膜をウイルス感染から守る経口ワクチンの報告が寄せられている。
粘膜免疫法で免疫応答を誘発すると、粘膜部位を病原体から守る働きをする。しかし、外来診療でのワクチンの直腸内投与は実際的ではなく、経口投与では胃の強い酸性度のために、おそらくワクチンは分解されてしまうだろう。
Jay Berzofskyたちは、この問題を解決するためにナノ粒子を使った薬剤放出システムを考案した。このナノ粒子は、ペプチドワクチンと免疫アジュバントをポリマーで覆ったもので、このポリマーは、大腸に到達する前に薬剤が放出され、小腸で早まって取り込まれるのを防いでいる。マウスでは、この経口ワクチンシステムによって免疫が誘導され、直腸内ワクチン投与と同じように、直腸と膣をウイルス攻撃から守ることができた。このような直腸と膣での免疫誘発は、大腸粘膜への薬剤を送達した場合に特異的にみられた。今後この経口ワクチンをヒトの腸の特性に合った最適な剤形にするためには、ヒトでの臨床研究が必要になるだろう。
doi:10.1038/nm.2866
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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