【進化】餌を噛み砕くためのカイアシの下顎
Scientific Reports
2012年6月29日
カイアシ類という非常に小さな甲殻類生物の下顎は、餌とする植物プランクトンの硬い殻を噛み砕くことができるが、このほど、この下顎の正確な組成が明らかになった。この複雑な口器の発生が、海生動物プランクトンにおけるカイアシ類の優占の基盤となった可能性がある。研究の詳細を報告する論文は、今週、Scientific Reportsに掲載される。
珪藻は、藻類の主要な分類群の一つで、鉱化した殻をもち、その優れた機械的特性が知られている。それでも、多くの甲殻類は、下顎を使って、珪藻の殻を噛み砕くことができる。カイアシ類の一部の種は、シリカを含む「オパール歯」を持っていることが知られているが、そうしたカイアシ種の口器の詳しい材料組成は未解明だった。
今回、J Michelsたちは、さまざまな顕微鏡技術を用いて、北大西洋と隣接海域に生息する雌のspiny copepod(Centropages hamatus)の下顎の顎基の構造と組成を調べ、それが、複雑な複合構造体であることを明らかにした。この構造体には、シリカに加えて、軟質で弾性のあるタンパク質「レシリン」が含まれており、ゴム状の支持構造を有するオパール歯が生えている。この構造体は、カイアシと珪藻の間で繰り広げられた進化の「軍拡競争」において珪藻の殻と共進化した可能性があり、おそらくは、機械的損傷のリスクを最小限に抑えつつ、オパール歯の効率が高くなったとMichelsたちは考えている。
doi:10.1038/srep00465
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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