Research Press Release
【神経科学】長期間にわたる低レベル騒音の悪影響
Nature Communications
2012年5月16日
長期間にわたって低レベル騒音にさらされると、脳の聴覚野が損傷し、正常な聴音過程が損なわれる可能性があることを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。聴音過程が、これまで考えられていたよりも障害されやすい可能性が、この新知見によって示されている。
聴音過程では、音波が脳の聴覚皮質で処理されて、神経活動に変換される。これまでの数多くの研究では、高レベル騒音に持続的にさらされると、聴音過程に有害な機能的変化が生じることが明らかになっていた。ところが、安全と考えられる騒音レベルでは、このような問題は生じていなかった。
今回、X ZhouとM Merzenichは、一般に「安全」と認められている低レベルの構造騒音に成体ラットを10時間又は24時間さらし、それを2か月間継続した。その結果、低レベル騒音への長期曝露が聴覚皮質を損傷し、音の識別能力が損なわれることが判明した。毎日10時間曝露の場合も毎日24時間曝露の場合もほぼ同じ程度に大きな影響が見られた。
このラットの実験で用いられた曝露時間は、ヒトの日常生活を代表するものではないかもしれないが、今回の研究で、騒音の安全基準見直しの潜在的必要性が明確になったとZhouとMerzenichは考えている。
doi:10.1038/ncomms1849
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物の行動:犬はおもちゃにすっかり夢中Scientific Reports
-
社会科学:オンライン上で歪められた年齢とジェンダーの表象Nature
-
材料科学:通常のプラスチックと同等の強度を持つ生分解性の竹プラスチックNature Communications
-
材料:海洋から回収した炭素を生分解性プラスチックに変換Nature Catalysis
-
動物の行動:ネグレクトされた子犬は成犬になるとより攻撃的で恐怖心が強くなるScientific Reports
-
遺伝学:自閉スペクトラム症の遺伝的に異なる形態Nature