Research Press Release
痛みを解明
Nature Medicine
2012年3月26日
痛みをどう感じるかは人によって違うが、P2RX7という遺伝子の変異が、これに関係しているとの報告が寄せられている。痛覚や鎮痛薬に対する反応には個人差があり、痛みの臨床試験の解釈を非常に難しいものにしている。今回の知見は、遺伝子変異の状態に基づいて患者に合わせた個別の疼痛治療を開発するのに役立つかもしれない。
Jeff MogilとMichael Saoterたちは、数多いマウス系統の痛み感受性の違いに着目し、観察された系統差にマウスのP2rx7遺伝子の変異が関係することを明らかにした。P2X7は細胞膜にあってイオンチャネルとして働く受容体だが、P2rx7遺伝子のある変異によって、この受容体が大きい小孔を形成できるようになる。この変異体をもつマウスは、これをもたないマウスよりも痛みを強く感じる。孔の形成を阻害するペプチドがあると、大きい小孔を形成する変異をもつマウスの場合に限って、痛みが弱くなる。
Salterたちは次に、乳腺切除後の痛みのある患者や関節炎患者で、P2RX7遺伝子が大きい小孔をつくるP2X7変異体をコードしていない場合には痛みが弱いことを明らかにして、この知見がヒトにも当てはまることを示した。
doi:10.1038/nm.2710
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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