Research Press Release
【代謝】エネルギー代謝に対する食餌の影響
Nature Communications
2012年3月28日
食餌の栄養素がエネルギー代謝に影響する過程を説明するための新たな機構を示した論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究で、ある特定のタンパク質が、エネルギー代謝に関与する遺伝子の調節因子で、栄養素に対する感受性があり、代謝性疾患の新たな治療法につながる可能性のあることが明らかになった。
リジン特異的デメチラーゼ1(LSD1)は、DNAパッケージングタンパク質を化学修飾することで遺伝子の活性を阻害することが知られており、そのために遺伝情報の読み出しが難しくなっている。今回、中尾光善(なかお・みつよし)たちは、LSD1がエネルギー代謝と脂肪酸代謝に関与する遺伝子の活性を特異的に調節することを発見した。また、肥満マウスの脂肪組織においてLSD1に調節される遺伝子の活性が著しく低下したが、LSD1阻害薬の投与で、その遺伝子の活性が上昇したことも判明した。以上の結果は、この機構が、体内細胞が食餌中の栄養素に対する代謝的適応に関与していることを示唆している。
中尾たちは、LSD1阻害薬が代謝性疾患の治療に役立つ可能性を示している。
doi:10.1038/ncomms1755
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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