Research Press Release
繊維症において欠損している阻害タンパク質
Nature Communications
2012年3月14日
繊維芽細胞における阻害タンパク質の欠損が繊維化疾患に関連していることを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この新知見が繊維症に特異的な治療法の開発に有用なことが、ゆくゆくは明らかになるかもしれない。 肺繊維症や肝硬変などの繊維化疾患の場合、弾力のあるコラーゲンのような分子が繊維芽細胞によって過剰産生されて、組織と器官の機能が阻害されることがある。このような繊維芽細胞の異常な活性化に至る分子機構については十分な解明が行われておらず、このことが、繊維化疾患の治療法開発の障害となっていた。今回、Jorg Distlerの研究チームは、さまざまな繊維化疾患の患者から採取した皮膚の切片を調べて、繊維化した皮膚の繊維芽細胞にDickkopf-1が欠損していることを見出した。そして、さまざまな繊維症の実験モデルにおいて、Dickkopf-1を継続的に産生するマウスが繊維症にかからなかったことを指摘している。さらに、Distlerの研究チームは、Dickkopf-1の欠損が、繊維症に関与していることが知られる増殖因子によって引き起こされ、Dickkopf-1が、通常は、シグナル伝達分子Wntを阻害することも明らかにした。 この新知見は、Dickkopf-1あるいは特定の薬剤によるWntシグナル伝達の阻害が繊維化疾患の効果的な治療法となる可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms1734
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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