【海洋科学】寒いのは困るが暑いのはもっと困る
Scientific Reports
2012年2月3日
サンゴは、短期的には、海水温の上昇より低下の方が大きなダメージを受けるが、長期的には海水温上昇の害の方が大きいことがわかった。今回の研究成果は、サンゴ礁の進化と保全を評価するための新たな枠組みにとっての基盤をもたらした。その詳細を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。 地球規模の気候変動に関連した極端な高温期と低温期は、その頻度と強度を増しており、サンゴの成長、白化と適応度に劇的な影響を及ぼすことが予想されているが、高温状態と低温状態に置かれたサンゴとその内部共生渦鞭毛藻類の健康状態に関する総合的評価は行われていなかった。今回、M Rothたちは、寒冷ストレスと熱ストレスが造礁サンゴの生理的過程に及ぼす影響を調べた。Rothたちは、枝状サンゴの一種であるヤングミドリイシ(Acropora yongei)を低温(摂氏21度)、高温(摂氏31度)、対照(摂氏26度)の水槽に入れ、20日間にわたって影響を調べる実験を行った。 Rothたちは、高温の場合も低温の場合もサンゴに悪影響が生じたが、その時間スケールは異なっていたことを報告している。実験が始まってから5日間、低温の水槽に置かれたサンゴは、高温の水槽に置かれたサンゴよりも成長の鈍化が大きく、光合成圧力が上昇した。しかし、最終的には、温度上昇によるストレスの方が大きかった。以上の結果は、サンゴの生物学的性質に関する新たな知見であり、地球規模でのサンゴ礁の保全にとっての効果的な管理戦略を策定するうえで重要な意味をもつかもしれない。
doi:10.1038/srep00240
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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