神経科学:長期培養ヒト脳オルガノイドに刻まれる時間の経過
Nature
2026年8月20日
脳オルガノイド(実験室で培養されたヒト細胞から形成された3Dの脳様組織)は、その発達段階に応じた分子的特徴を示していることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。これまでに報告された中で、最長となる5年以上にわたり観察されたこれらのオルガノイドは、無事に成熟し、出生後の脳に似た特徴を示した。これにより、脳細胞の発達の後期段階に関する重要な知見が得られた。
ヒトの脳が完全に成熟するまでには約20年かかる。脳オルガノイドは、出生後の脳の発達に関する研究を促進し得るものの、既存の研究の多くはおもに初期段階を模倣しており、ほとんどの研究では培養期間が数か月にとどまり、長期生存率は低く、神経細胞(ニューロン)などの脆弱な細胞が早期に失われてしまう。実験室で、多種多様な脳細胞を含む複雑な組織を数年間にわたり培養することに成功した場合、成熟した脳とその発達をより正確に再現できると考えられる。
Paola Arlottaら(ハーバード大学〔米国〕)は、ヒト脳オルガノイドを5年以上にわたり培養した。著者らは、若年および成熟した異なる年齢の特殊化した脳細胞を混合することで、「キメラオルガノイド(chimeric organoids)」を作成した。その結果、より古い前駆細胞は発達の初期段階を飛び越え、通常なら形成に2か月を要する成熟した神経細胞のタイプをわずか2週間で生成した。これは、細胞が、年齢と発達に費やした時間の両方を示すマーカーを保持していたことを示している。全体として、長期培養されたオルガノイドの全ゲノム解析により、出生前後期および出生後のヒト脳に類似した特徴が明らかになった。オルガノイドが老化するにつれて、最終的にはより成熟した遺伝子発現パターン、神経細胞のタイプ、および樹状突起スパイン構造を獲得した。
発達年齢と培養期間の両方に関連する特性を正確に保持するこれらの長期培養オルガノイドは、成熟した脳細胞を研究するための新たな機会をもたらすと、著者らは結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 19 August 2026
Faravelli, I., Antón-Bolaños, N., Wei, A. et al. Human brain organoids record the passage of time over multiple years. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10877-x
doi:10.1038/s41586-026-10877-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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