Research Press Release

人工知能:ジャズミュージシャンの「指紋」を明らかにする

Nature Machine Intelligence

2026年8月18日

20人の著名なジャズピアニストを対象とした研究によると、機械学習モデルは録音からジャズピアニストを識別し、個々の演奏者を特徴づける音楽的な「指紋(fingerprints)」を明らかにできるという。Nature Machine Intelligence にオープンアクセスで掲載されるこの研究は、演奏者の帰属やスタイル、文化遺産、および音楽教育に関する知見をもたらす可能性がある。

音楽家は、その作品に見られる特徴的なパターン、すなわち「指紋」によって識別されることがよくある。これには、和声進行、リズム構造、および旋律的モチーフなどが含まれる。ジャズは、作曲、即興、および演奏が融合しており、それらが特定の演奏者に特に固有のものとなり得るため、こうした指紋を研究する絶好の機会を提供している。しかし、ジャズの計算機による分析は困難であった。その理由は、ほとんどの演奏が音響録音として存在しており、音響データで直接訓練したモデルは、録音環境や使用された機材の種類といった変数により、人間が解釈するのが難しい場合があるためである。

Huw Chestonら(ケンブリッジ大学〔英国〕)は、20人の著名なジャズピアニストによる1629件の演奏から厳選された84時間の録音データセットを用いて、演奏者を識別するための教師あり学習モデル(supervised learning)を訓練した。これには、ビル・エヴァンス(Bill Evans)、オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)、チック・コリア(Chick Corea)、キース・ジャレット(Keith Jarrett)、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)、およびアーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)の録音が含まれていた。録音データは、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)の「ピアノロール(piano roll)」形式に変換された。これは、どの音符がいつ、どの音程で演奏されたかを示すデジタル表現である。最良の性能を示したモデルは、94.4%の精度で演奏者を識別した一方、旋律、和声、リズム、およびダイナミクスを分離した、解釈しやすいモデルは91.3%の精度に達した。各要素を個別に検証したところ、和声が最も高い予測精度を示し、リズム、旋律がこれに続き、ダイナミクスの精度が最も低かった。

著者らは、この手法が、既存の学術文献と一致する特徴や、これまで十分に議論されていない特徴を含め、演奏者を特徴づける音楽的パターンを研究者が探求する一助となり得ると示唆している。また、結果を検討するためのオープンソースモデルとウェブアプリケーションも公開した。ただし、旋律や和声といった音楽的側面は重なり合う場合があること、また、MIDIピアノロールでは、ビブラート(音の高さを細かく揺らす表現)やピッチベンド(音程を連続的に変化させること)といった音色や音質上の特徴を含め、ジャズ演奏のあらゆる側面を捉えきれない点にも言及している。今後の研究では、この手法をほかのジャンル、楽器、歴史的文脈、あまり知られていない、または、歴史的に十分に取り上げられてこなかったミュージシャンに拡張できる可能性がある。

Cheston, H., Bance, R. & Harrison, P.M.C. Machine learning of artistic fingerprints in jazz. Nat Mach Intell 8, 1261–1274 (2026). https://doi.org/10.1038/s42256-026-01279-9
 

doi:10.1038/s42256-026-01279-9

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