Research Press Release

地質学:南極の「血の滝」が古代の海洋生物群集を明らかにする

Nature Geoscience

2026年8月4日

南極の「血の滝(Blood Falls)」を流れる塩水には、海洋特有の微生物群集が含まれており、これは氷河の下にある塩水系が海洋起源であることを示す証拠となる可能性を報告する論文が、Nature Geoscience にオープンアクセスで掲載される。この発見は、微生物群集が大きな環境変化をどのように乗り越えて存続できるかについて、新たな知見をもたらす。

南極のマクマードドライバレー(McMurdo Dry Valleys)にあるテイラー氷河(Taylor Glacier)の端に位置する血の滝では、深紅色の水が下流の氷河前縁にあるボニー湖(Lake Bonney)へと勢いよく流れ出している。この滝の色は、鉄分を豊富に含む塩水が氷河下から放出されることで説明されてきたものの、その水の起源については依然として不明だった。これまでの地球化学的研究では、血の滝に水を供給する氷河下の塩水は、過去の温暖期に海水がテイラーバレー(Taylor Valley)に流入した際に生じた可能性が高く、その後、海面低下にともない前進するテイラー氷河の下で隔離されたものだと示唆されていた。

Angela Zoumplisら(カリフォルニア大学サンディエゴ校、スクリップス海洋研究所〔米国〕)は、テイラー氷河と血の滝に生息する微生物の起源を調べるため、マクマードドライバレー地域から採取した水、堆積物、および大気のサンプル167点を分析した。各試料に含まれる真核生物および原核生物の分類群を特定するために、一連の遺伝学的手法を適用した結果、氷河末端部の赤みを帯びた氷、泥、および堆積物中の微生物はほぼすべてが海洋環境に関連しているのに対し、周辺の地点では淡水および陸生の微生物群が優勢であることが判明した。より具体的には、血の滝が流れる氷河末端部では、ドライバレーのほかの地点に比べて、近隣の海洋サンプルと共通する真核生物の割合が高かった(それぞれ9.34%、1.15%)。これは、塩水によって維持される微生物群集が強い海洋との親和性を持っていることを示している。

これらの知見は、血の滝に水を供給する氷河下の水が、海面低下にともない、テイラー氷河がその上を覆ったことで海洋から隔絶された海水に由来する可能性が高いことを示している。同様に、著者らは、テイラー氷河末端の試料から観察された海洋微生物が、現代の風による運搬のみによってそこに堆積した可能性は低いと指摘している。今後の研究で、これらの微生物をさらに調べることにより、氷河下の水がいつ隔離されたかの理解が深まり、極地の景観の進化に関する知見が得られる可能性がある。

Zoumplis, A., Füssy, Z., Kaul, D. et al. Molecular evidence for a relict marine community in an Antarctic Dry Valleys subglacial brine-fed system. Nat. Geosci. (2026). https://doi.org/10.1038/s41561-026-02054-6

 

doi:10.1038/s41561-026-02054-6

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