Research Press Release

量子コンピューティング:量子計算用シリコンチップ

Nature

2026年7月30日

量子計算を可能にするうえで重要な基本演算を実行可能なシリコンベースの量子コンピューティングチップが開発されたことを報告する2つの別々のグループによる論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。

商用環境で計算を行うためには、量子処理チップには多数の量子ビット(qubits;情報の単位)が必要となり、これらを大規模に製造・集積する必要がある。このプロセスにおける候補として、シリコン製の「交換のみ」型量子ビットが提案されており、現在の実装では、周囲の電子回路と複雑な配線を介して接続されている。しかし、この過程にともなう熱により、量子ビットに格納された情報が破損する恐れがある。

HRL Quantum Team and Collaboratorsは、この問題に対処するため、制御システムを同一プラットフォームに統合したシリコン量子プロセッサーを用いた。電子制御システムは、量子コンピューター本体と同様の極低温条件に保たれている。この手法により、制御電子回路から感度の高い量子ビットへ伝達される熱量を低減し、計算中の反復的なエラー訂正を可能にする。同チームは、最大18量子ビットを収容可能なプロセッサーを用いて、最大7量子ビットを用いた量子エラー訂正プロトコルを観測した。

別の論文では、Brennan Undsethら(デルフト工科大学〔オランダ〕)が、移動型量子ビットを用いた長距離相互作用の実現を目指した。このデバイスは、1つの移動型量子ビットを4つの固定型量子ビット(著者らはこれを「バス停」と呼んでいる)との間で往復させる。このチップは、量子エラー訂正に必要なプロセスである「マルチ量子ビットパリティー測定(multi-qubit parity measurements)」を実行することができ、量子チップ内での長距離接続を改善する手段としての可能性を示した。

同時掲載されるNews & Viewsの記事で、Natalia Aresは、シリコンベースの量子プロセッサーが従来の半導体チップの台頭と同様の軌跡をたどるかどうかは、まだ未知数であると指摘している。しかし、Aresは次のように付け加えている。「これらの研究は、実用的な量子コンピューターを構築するという課題が、物理学だけでなく工学の課題でもあることを明らかにしており、この目標がどれほど急速に実用段階に近づきつつあるかを先見的に示している。」

Members of the HRL Quantum Team and Collaborators. A digitally controlled silicon quantum processing unit. Nature 655, 1154–1159 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10754-7

Undseth, B., Meggiato, N., Wu, YH. et al. Weight-four parity checks in a spin-shuttling architecture. Nature 655, 1160–1166 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10766-3

News & Views: How silicon-chip technology is being re-engineered for quantum computing
https://www.nature.com/articles/d41586-026-02124-0

 

doi:10.1038/s41586-026-10754-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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