Research Press Release

惑星科学:ニッケルを豊富に含む岩石が古代の火星の化学的性質を明らかにする

Nature Communications

2026年4月1日

NASAの火星探査車パーサビアランス(Perseverance rover)が、かつてジェゼロ・クレーター(Jezero crater)内の湖へ水を運んでいた古代の河川跡であるネレトヴァ渓谷(Neretva Vallis)において、ニッケルを豊富に含む火星の岩石を発見したことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この発見は、初期の火星で起こった化学反応について、さらなる知見をもたらすかもしれない。

Henry Manelskiら(パデュー大学〔米国〕)は、パーサビアランス探査車に搭載されたレーザー、赤外線分光計、およびX線分光計を用いて、ネレトヴァ渓谷にある30億年以上前と推定される126個の堆積岩および8か所の岩石表面を調査した。その結果、32個の岩石から重量比で最大1.1%のニッケルが検出され、著者らは、これがこれまでの火星の岩盤で観測された中で最も高い含有量であると指摘している。ニッケルは、硫化鉄化合物や、ジャロサイト(jarosite)や赤金鉱(akaganeite)など、これらの岩石の風化によって生成された硫酸塩鉱物と共存する傾向があることが観察された。

著者らは、ネレトヴァ渓谷で見つかったニッケルに富む鉄硫化物の構造が、その化学組成や形状において、地球上の堆積岩に含まれる硫化鉄鉱物である黄鉄鉱(pyrite)と類似していることを明らかにした。これまでの研究では、地球の堆積岩中の硫化鉄は、おもに鉄含有鉱物の存在下で硫酸塩を利用する微生物の嫌気呼吸によって形成されると示唆されてきた。また、ネレトヴァ渓谷では、有機炭素化合物の存在下で硫化鉄が検出されており、これらの化合物は生物によって形成された可能性も提案されている。しかし、著者らは、これらが生物を介さない反応によって生じた可能性もあると指摘し、今回の研究ではそのような生物の存在を示す証拠は得られていないと強調している。

ニッケルは、多くの古代の古細菌や細菌種の酵素に欠かせない成分であり、エネルギー生成、炭素固定、および有機物の分解に用いられる一部の化学経路に必要とされる。著者らは、ニッケルを豊富に含む岩石の存在は、もし初期の火星に生物がしていたなら、利用可能な形でニッケルが存在していた可能性を示すものだと述べている。著者らは、このニッケルが火成岩の風化によるものか、あるいはニッケルを豊富に含む隕石に由来するかもしれないと推測している。

著者らは、ネレトヴァ渓谷におけるニッケルの起源を特定し、同地点の有機物との関連性を調査するためには、さらなる研究が必要であると結論づけている。

Manelski, H.T., Wiens, R.C., Broz, A. et al. Strong nickel enrichment co-located with redox-organic interactions in Neretva Vallis, Mars. Nat Commun 17, 2705 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-70081-3
 

doi:10.1038/s41467-026-70081-3

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