Research Press Release

環境:ロケットの再突入に直接関連する大気汚染

Communications Earth & Environment

2026年2月20日

2025年2月に観測された上層大気のリチウム汚染の噴煙は、特定のロケット段(ステージ)の再突入に起因するとされた。オープンアクセスジャーナルCommunications Earth & Environment に掲載されるこの結果は、宇宙デブリ再突入による上層大気汚染の直接検出として初めて確認された事例である。

廃棄衛星や使用済みロケット段は、大気圏再突入時に分解するよう設計されている。これまでの研究は、地上に到達するデブリのリスクに焦点を当ててきたが、分解する宇宙デブリが中層圏(海抜約50~85キロメートル)や下部熱圏(海抜約85~120キロメートル)に及ぼす影響についてはほとんど知られていなかった。

Robin Wingら(ライプニッツ大気物理学研究所〔ドイツ〕)は、ドイツ北部に設置されたレーザー式リモートセンシング装置(大気状態を測定するライダー)を用いて、下部熱圏におけるリチウム原子の濃度を測定した。リチウムは、宇宙船部品に広く使用されるが、この高度では自然界に微量しか存在しない。2025年2月20日00時20分(UTC;協定世界時)直後、著者らはリチウム原子濃度が基準値の10倍に急増する現象を検出した。このリチウムプルームは、海抜97キロメートルから94キロメートルまで広がり、データ記録が停止するまでの27分間にわたり観測された。

著者らは、大気風モデルを用いてリチウムプルームの経路と潜在的な発生源を計算した。その結果、最も可能性の高い発生源は、約20時間前にアイルランド西側の大西洋上空で制御不能のまま大気圏に再突入したファルコン(Falcon)9ロケットの上段の軌道上であることが判明した。追加の計算により、このプルームの発生源が自然の大気プロセスである可能性はきわめて低いことも示された。

著者らは、本論文が単一の宇宙デブリによる汚染の事例研究であると同時に、そのような汚染を測定する手法を示している点を指摘している。著者らは、降下中に化学変化が生じるため、放出された物質のすべてをこの方法で測定できるわけではないと警告している。著者らは、これらの汚染物質が大気に長期的に与える影響を理解するには、さらなる観測と大気化学モデリングが必要だと主張する一方で、過去10年間で軌道打ち上げが大幅に増加していることをふまえると、上層大気汚染の量は増加する可能性が高いと注意を促している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 12(つくる責任、つかう責任)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Wing, R., Gerding, M., Plane, J.M.C. et al. Measurement of a lithium plume from the uncontrolled re-entry of a Falcon 9 rocket. Commun Earth Environ 7, 161 (2026). https://doi.org/10.1038/s43247-025-03154-8
 

doi:10.1038/s43247-025-03154-8

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