Research Press Release

気候変動:気温の上昇が添加糖の消費量の増加と関連している

Nature Climate Change

2025年9月9日

地球温暖化は米国における砂糖入り飲料や冷凍デザートなどの添加糖の摂取量の増加と関連している可能性があり、特に社会経済的に不利な立場にあるグループで顕著であることを報告する論文が、Nature Climate Change にオープンアクセスで掲載される。気温が12~30℃の範囲で1℃上昇するごとに、1人1日あたりの添加糖の消費量は0.70グラム増加した。この知見は、将来の気候変動シナリオ下で添加糖の過剰消費に伴う潜在的な健康リスクを軽減する必要性を浮き彫りにしている。

気温の変動が人々の食事や飲み物の選択に影響を及ぼすことは広く知られている。高温環境では身体の水分補給需要が高まり、冷やした甘味製品の消費を好む傾向が強まる。これは特に、高糖分食品や飲料の大量消費が習慣化された地域で顕著である。過剰な添加糖の消費は、肥満、代謝障害、およびその他の健康リスクと関連している。しかし、気候変動が食習慣にどのような影響を及ぼし、それが健康上どのような結果をもたらすかは依然として明らかになっていない。

気象条件が添加糖の摂取量に与える影響を評価するため、Pan Heら(カーディフ大学〔英国〕)は、2004年から2019年までの米国における家計の食品購入データを分析し、気温、風速、降水量、および湿度レベルを含む地域の気象データと比較した。その結果、12~30℃の範囲で気温と添加糖の消費量に正の相関が認められ、主にソーダやジュースなどの糖分入り飲料、アイスクリームやジェラートなどの冷凍デザートの消費量増加が要因であることが判明した。この影響は、所得や教育水準が低い世帯でより顕著であった。著者らはさらに、2095年までに(あるいは産業革命前に比べて5℃の気温上昇に相当)国内の添加糖の消費量が1日あたり2.99グラムに増加する可能性があり、特に女性、低所得層、および低学歴層でリスクが高まると予測している。

これらの発見は、気候変動によって悪化する栄養と健康の格差への迅速な対策の必要性を示しており、特に重点的な食習慣適応介入が求められる主要な集団を特定している。著者らは、この分析結果が米国および栄養や健康面での課題が増大している他国における食料政策や気候変動適応戦略の立案に資するかもしれないと示唆している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を)およびSDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

He, P., Xu, Z., Chan, D. et al. Rising temperatures increase added sugar intake disproportionately in disadvantaged groups in the USA. Nat. Clim. Chang. 15, 963–970 (2025). https://doi.org/10.1038/s41558-025-02398-8
 

doi:10.1038/s41558-025-02398-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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