Research Press Release

物理学:新たな光ファイバーが通信技術を向上させるかもしれない

Nature Photonics

2025年9月2日

新たに開発された中空コア光ファイバーは、従来のガラスではなく空気中で光を伝導させることで、ファイバーにおいてこれまで記録された中で最も低い光損失を実現する可能性がある。これは、信号が伝送中に弱まる度合いが小さくなることを意味する。Nature Photonics にオープンアクセスで掲載されるこの設計は、伝送速度を45%向上させるとともに、増幅が必要になるまでの長距離伝送においてより多くのデータ伝送を可能にする。

通信用光ファイバーは通常、固体シリカガラス構造を採用しており、数十年にわたる最適化にもかかわらず、信号損失が限界要因となってきた。そのため、ファイバーを通過する光の約半分は、20キロメートル程度で失われ、大陸間陸上や海底回線などの長距離伝送では、信号増幅のために光増幅器の定期的な使用が必要となる。信号損失の低減は、狭い波長範囲でしか達成できず、伝送可能なデータ量を制限してきた。これが過去数十年にわたり光通信の発展を制約してきた要因である。

Francesco Polettiら(Microsoft Azure Fiber〔英国〕)は、中空の空気コアを微細なシリカリングのパターンで囲み、光を導く光ファイバーを開発した。実験室での試験では、光通信で一般的に使用される波長において、このファイバーの光損失は1キロメートルあたりわずか0.091デシベルであった。その結果、適切な波長の光信号は、増幅が必要になるまでの距離が約50%延長された。この設計は、従来の光ファイバー設計と比較して、はるかに広い伝送窓(信号損失と歪みが最小限で光が伝送できる波長範囲)も提供する。

著者らは、より大きな空気コアを使用することで、この新しいタイプの光ファイバーはさらに低い損失を実現できるかもしれないと指摘しているが、これを確認するにはさらなる研究が必要である。

Petrovich, M., Numkam Fokoua, E., Chen, Y. et al. Broadband optical fibre with an attenuation lower than 0.1 decibel per kilometre. Nat. Photon. (2025). https://doi.org/10.1038/s41566-025-01747-5
 

doi:10.1038/s41566-025-01747-5

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