人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住
Nature
2025年8月7日
スラウェシ島(Sulawesi)で発見された古代の石器は、このインドネシアの島が、隣接するフローレス島(Flores)とほぼ同じ時期、あるいはそれ以前にホミニン(hominins)によって居住されていた可能性を示している。この研究結果は、今週のNature にオープンアクセスで掲載され、古代ホミニンが東南アジア本土を越えて拡散した過程に光を当てるものである。
これまでの研究では、インドネシアのワラセア(Wallacea)地域における最も初期のホミニンの痕跡は、フローレス島で発見された石器であり、その年代は約102万年前とされてきた。フローレス島は、スラウェシ島の数百キロ南に位置し、小柄なホミニンであるフローレス原人(Homo floresiensis;通称「ホビット」)が約5万年前まで生息していたことで知られている。一方、スラウェシ島(ワラセア最大の島)でこれまで知られていた最古の遺物は、少なくとも19万4,000年前のものであった。
Budianto Hakim(インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)〔インドネシア〕)とAdam Brum(グリフィス大学〔オーストラリア〕)らは、スラウェシ島のカリオ(Calio)から発掘された石片を分析し、その年代を104万年から148万年前と推定した。この新たな発見は、スラウェシ島がフローレス島よりも前に、未同定の古代人類によって占領されていた可能性を示す。居住者がこの島に到達した正確な時期は未だ明らかになっていないが、これは古代人類が海を越えて孤立した陸地へ渡った最古の証拠となるかもしれない。
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- Published: 06 August 2025
Hakim, B., Wibowo, U.P., van den Bergh, G.D. et al. Hominins on Sulawesi during the Early Pleistocene. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09348-6
doi:10.1038/s41586-025-09348-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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