コンピューターサイエンス:不正行為を防ぐ乱数生成器
Nature
2025年6月12日
量子物理学に基づく追跡可能なプロセスを使用し、ランダム性を完全に証明できる乱数生成器(random number generator)を報告する論文が、Nature に掲載される。
乱数生成は、陪審員の選出や複雑なサイバーセキュリティ・アルゴリズムなどのタスクに不可欠であり、現在コンピューターによって実行されているタスクである。しかし、既存のハードウェアに依存する現在の乱数生成器では、そのプロセスのある時点で、システムがハッキングされたり改ざんされたりしていないことを信頼する必要がある。そのため、特定の生成器が本当にランダムかどうかを証明する明確な方法はない。
Gautam Kavuriら(コロラド大学〔米国〕)は、著者らが開発したColorado University Randomness Beacon(CURBy)と呼ばれるプロトコルに基づく乱数生成器を発表した。この乱数生成器では、110メートル離れた2つの場所で同時に2つの光子が測定される。測定プロセスの各ステップは、ハッシュチェーン(hash chain)と呼ばれる一連のデータ上に公開記録される。これにより、プロセスを改ざんしようとする試みが検出可能となり、利用者への信頼性の要請を最小限に抑えつつ、プロセスを真にランダムなものにすることができる。Kavuriらは、この生成器を40日間で7,454回実行し、真にランダムな数値が7,434回生成し、99.7%の成功率を確認した。研究者たちは、1日平均186個の乱数を発生させることができ、その時間は207.1秒から327.7秒であった。
著者らは、ネットワークにより多くのビーコンを含めることで、生成器のセキュリティを強化できると指摘している。同時掲載されるNews & ViewsにPeter Brownが次のように述べている。「第三者が乱数発生器の最終出力を検知されずに操作するためには、複数の地理的拠点において、エンタングルメント(もつれ)の測定記録とハッシュチェーンを同時に改ざんする必要があるでしょう。」
- Article
- Published: 11 June 2025
Kavuri, G.A., Palfree, J., Reddy, D.V. et al. Traceable random numbers from a non-local quantum advantage. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09054-3
doi:10.1038/s41586-025-09054-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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