細胞生物学:ナノプラスチックがマウスの腸内細菌叢と宿主の相互作用を変化させる
Nature Communications
2025年6月11日
ナノプラスチックは、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と宿主との相互作用を変化させることによって、マウスの腸内の完全性を損なうかもしれないことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この研究では、マウスの腸内微小環境とナノプラスチックの複雑な相互作用を調べている。
ナノプラスチックとは、直径1,000ナノメートル以下のプラスチック片であり、プラスチックが分解される際に生成される。これまでの研究で、ナノプラスチックの取り込みが腸内細菌叢を乱すことが示唆されているが、この効果の背後にある根本的なメカニズムはよくわかっていない。
Wei-Hsuan Hsuら(国立嘉義大学〔台湾〕)は、RNAシークエンシング、トランスクリプトーム解析、および微生物プロファイリングを用いて、ポリスチレンナノプラスチックをマウスに摂取させたときの腸内微小環境への影響を解析した。その結果、マウスの腸内におけるナノプラスチックの蓄積は、腸管バリアの完全性(intestinal barrier integrity)に関与する2つのタンパク質(ZO-1〔Zonula occludens-1〕とMUC-13〔Mucin 13〕)の発現変化と関連しており、腸管透過性を破壊する可能性があることがわかった。また、ナノプラスチックは腸内細菌叢のアンバランスを誘導することも示され、特に、これまでの研究で胃腸機能障害に関与してきたルミノコッカス科(Ruminococcaceae)の細菌が増加していた。
これらの知見は、ナノプラスチックがマウスの微生物叢と腸内環境に影響を与えるメカニズムを示唆している。しかし、ナノプラスチックの蓄積が人間にどのような影響を与える可能性があるのかを探るには、研究が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 10 June 2025
Hsu, WH., Chen, YZ., Chiang, YT. et al. Polystyrene nanoplastics disrupt the intestinal microenvironment by altering bacteria-host interactions through extracellular vesicle-delivered microRNAs. Nat Commun 16, 5026 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-59884-y
doi:10.1038/s41467-025-59884-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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