惑星科学:ボイジャー2号が天王星をフライバイしたのは太陽の異常現象の最中だった
Nature Astronomy
2024年11月12日
ボイジャー2号(Voyager 2)が1986年に行った天王星のフライバイ(接近通過)は、天王星に関する科学的な理解の大部分を形成しているが、太陽風によって磁気圏が異常に圧縮された珍しい状況下で行われた可能性があることを報告する論文が、Nature Astronomy に掲載される。この発見は、天王星系に対する私たちの理解が、以前考えられていたよりも限定的なものであることを示唆している。
惑星磁気圏(磁場が支配する惑星周辺の領域)は、惑星周辺の環境に影響を与えるため、その特性を理解することはミッションを計画するうえで不可欠である。ボイジャー2号が天王星をフライバイした際、強い非対称性を持ち、他の惑星の磁気圏に共通する要素であるプラズマがないように見え、高エネルギー電子の帯が異常に強いという特殊な磁気圏が発見された。このたった1回の測定から得られた特徴は、それ以来、天王星の磁場を理解する基礎として使われてきたが、これらの異常は複雑な物理学なしに説明することは困難だった。
Jamie Jasinskiらは、フライバイ前のボイジャー2号のデータを再解析し、探査機が天王星に遭遇したのは、太陽の大気から荷電粒子の流れが放出された強烈な太陽風イベントの直後であることを突き止めた。これにより、天王星の磁気圏が圧縮され、4%の確率でしか起こらない状態になった。この状態では、磁気圏にはプラズマがなく、高励起電子放射帯がある。著者らは、もしボイジャー2号が実際のフライバイの1週間前に天王星を訪れていたら、木星、土星、および海王星といった太陽系の他の巨大惑星と同じような磁気圏を発見していただろうと示唆している。著者らは、天王星での太陽風の変動により、太陽極小期に磁気圏のサイクルが2回ある可能性を示している。さらに、チタニア(Titania)とオベロン(Oberon;天王星の最も外側にある衛星)が磁気圏の外側を公転している可能性は極めて低く、磁気圏の干渉を受けずに地下の海を検出できるかもしれない。
著者らは、これらの発見はこれまでの仮定を覆すものであり、天王星の磁気圏をより正確に理解するための将来のミッションの必要性を明らかにするものであるため、天王星の理解はまだ非常に限られていると指摘している。
Jasinski, J.M., Cochrane, C.J., Jia, X. et al. The anomalous state of Uranus’s magnetosphere during the Voyager 2 flyby. Nat Astron (2024). https://doi.org/10.1038/s41550-024-02389-3
doi:10.1038/s41550-024-02389-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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